2010年8月30日月曜日

クライミングのための懸垂(チンニング)

クライミングのためのトレーニングとしては比較的行いやすい懸垂について、改めて調べたり考えたりしてみた。

懸垂やロックオフはクライミングにおいて基本的な動作なので、ウェイトトレーニングとして懸垂を行うのは間違っていない。ただし、初級者は登るのが一番のトレーニングになるので、時間が確保できるなら登ることを優先するべき。また、中級者以上では指の強さがより重要になってくるということもあり、鍛える部位の優先順位をよく考える必要がある。

最大筋力と筋持久力とでは、まず最大筋力の強化を優先させるべきとされている。最大筋力が向上すれば、それまで限界だったムーブが少し力を抜いて登れるようになれるわけだから、持久力も向上したことになる(LT値が高まり乳酸の発生を遅らせることができる)。一方、筋持久力がいくらあっても、最大筋力が足りず不可能なムーブがひとつでもあればその課題/ルートは登れない。ということで、ここでは最大筋力を高めるためのトレーニングを前提とする。

いわゆる普通の懸垂

クライミングの特性を考えた場合、とりあえず負荷は自重で、無理な場合は椅子やゴムチューブに片足を置いたりして軽減すればいい。筋肥大を目的としたウェイトトレーニングの原則から1セットの回数は8~12回、セット数は3~5セットで、各セット間のインターバルは1~2分程度に設定する。

(追記)筋肉は同じ刺激が長期間続くとそれに適応してしまうので、停滞期(プラトー)に入り回数が伸びなくなってきたら、セット数やインターバルの長さを変えたり、バリエーションや片手ロックオフに移行するなど変化をつける必要がある。

フィンガーボードなどで指も同時に鍛えようとするのはやめたほうがいい。ひとつのトレーニングで同時に指にも適切な負荷を与えるのは不可能なため。指は指に焦点を当てた別のトレーニングをするべき(デッドハングによる指のトレーニング)。

バリエーション

手の幅を広くしたり狭くしたりすることで、普通の懸垂とは異なる筋肉を使うことができる。また、引っ掛けたロープなどを利用し、左右で段差をつけることで片手への負荷を増やすことができる。実際のクライミングでは、自分の肩幅だったり、両手の高さが揃っているホールドはまれなので、ウェイトトレーニングにおける特異性の原則にも適っていると思う。

最大筋力の向上は筋肥大によってだけではなく、筋繊維の動員率を上げることによっても達成される。その場合は回数を5回未満に設定し、その回数で限界になる程度のウェイトを装着して行う。インターバルはクレアチンリン酸が再合成されるのを待つ必要があるため3〜5分程度。筋動員率向上のためのトレーニングは、神経系の適応によってより多くの筋繊維を動員しようというもので、今ある筋肉量で筋力アップさせようということだから、いずれはどこかで頭打ちになる。それ以上は筋肉を肥大させるしかない。

片手ロックオフ

両手での懸垂が強くなってきたら、体を引きつけた状態で固定する片手ロックオフのトレーニングも行ったほうがいい。これも筋動員率の向上を狙ったトレーニングだけど、片手ロックオフからのエキセントリック・コントラクション(ネガティブとも呼ばれる)には筋肥大の効果がある。詳しくは片手ロックオフ参照。

片手懸垂

片手懸垂の練習としては、上で挙げた片手ロックオフやネガティブ、反対の手で手首・肘・肩や鉄棒の支柱などをつかんで補助する方法がよく紹介されている。補助ありの場合、セットの後半は補助側の手も全力になってしまい、片手懸垂のための筋肉を鍛えているのか補助するための筋肉を鍛えているのかわからなくなってしまうことがある。これを避けるにはアーチャープルアップが適している。手幅は広めで真上ではなく左右どちらかに向かって懸垂を行う。一番上では補助側の手をバーから離し、手首周辺をバーの上に乗せて腕を伸ばす。再びバーをつかみ体を下ろしたら、次は先ほどとは逆の方向に向かい同じことを行う。

参考