2010年3月31日水曜日

クライミングと体幹

(追記)再度全面的に書き直し

伝統的なウェイトトレーニングをしていれば体幹トレーニングは必要ない、という話をよく聞くようになってきたので、体幹トレーニングの効果と競技パフォーマンスへの影響について調べてみた。なお、この記事で引用している論文のフルテキストはすべてGoogle Scholarで見つけた。

まずは、エクササイズ中の体幹の筋活動を調べたシステマティックレビューを読んでみた。ウェブ検索では元になったと思われる卒業論文も見つかり、結論を含めいろいろ異なるので注意が必要。

Martuscello, J. M., Nuzzo, J. L., Ashley, C. D., Campbell, B.I., Orriola, J. J., Mayer, J. M. (2013). "Systematic review of core muscle activity during physical fitness exercises." J Strength Cond Res 27:1684-1698.

  • エクササイズを五つのカテゴリに分類し、それぞれのエクササイズにおける腰多裂筋、腹横筋、腰方形筋の筋電図活動から、最も体幹を刺激するエクササイズを調べた
  • 個々の研究のmethodological qualityはlowからmoderateで、バイアスがかかっている危険性が高い
  • とは言え、現在得られているエビデンスは、腰多裂筋の筋電図活動が最大になるのはフリーウェイト(デッドリフト、ランジ、スクワット)ということを示している
  • 腹横筋については、他のエクササイズと比べて明らかに効果的なエクササイズはないと考えられる
  • 腰方形筋は条件に合致する論文が見つからなかった
  • 体幹に特化したトレーニングよりもスクワットやデッドリフトなどの多関節フリーウェイトエクササイズをやったほうがいい
  • 得られた知見は、床での体幹トレーニングにball/deviceを足しても、腰多裂筋と腹横筋の筋電図活動は増えないことも示している

しかし、デッドリフトもスクワットもクライミングには重要ではないと信じられている下半身の筋肉も鍛えることになってしまう。筋肥大に伴う体重増加の影響を考えると、クライマーには単純に当てはめることはできないような気もする。クライミングと下半身の筋肉の関係について調べた論文は見つけられなかった。

続いて、トレーニング経験者を対象に体幹筋力、physical fitness and athletic performance、体幹トレーニングの効果の関係について調べたメタアナリシスの論文を読んでみた。

Prieske, O., Muehlbauer, T., Granacher, U. (2016). "The Role of Trunk Muscle Strength for Physical Fitness and Athletic Performance in Trained Individuals: A Systematic Review and Meta-Analysis." Sports Med 46:401-419.

  • 「体幹トレーニング」を、体幹筋を鍛えることを主目的とした特定のエクササイズを含むトレーニングプログラムと定義している
  • methodological qualityの平均値は、介入研究では低く、相関を調べた研究では適切な尺度がないため算出されていない
  • 得られた知見は、physical fitness and athletic performanceにおける体幹筋力の役割は小さいことを示している
  • 体幹トレーニングは体幹筋力を鍛えるのには有効だが、physical fitness and athletic performanceへの寄与はわずかだと思われる
  • 競技レベルとは関連がなかった

ということで、体幹トレーニングは必要ないかもしれない。しかし、体幹筋力の向上が転移しないようなphysical fitness and athletic performanceの指標を使っている可能性にも言及しているので、競技パフォーマンスは向上していてもそれを認知できていないだけかもしれない。実際に、競技に合わせた体幹トレーニングを実施した六つの研究で、競技パフォーマンスの指標のうち少なくとも一つが有意に向上したという報告もある[1]。

クライミングにおいては、体幹との関連を調べた論文が見つからなかったためなんとも言えない。

また、core stabilityは傷害防止との関わりも示されているそうで[1]、怪我をしないことはパフォーマンスに結びつく。

参考文献

  1. Reed, C. A., Ford, K. R.,Myer, G. D., Hewett, T. E. (2012). "The effects of isolated and integrated 'core stability' training on athletic performance measures: a systematic review." Sports Med 42:697-706.